「リトミックとリズム遊びって、何が違うんでしょう?」
手拍子をしたり、音楽に合わせて歩いたり、歌いながら身体を動かしたり。
確かに、活動だけを見るとよく似ていますよね。
でも、私はこの2つを、活動の形だけで区別する必要はないと思っています。
大切なのは、その活動を通して子どもが何を聴き、感じ、どのように音楽を経験しているかということです。
まず、違いを簡単に整理してみましょう。
リズム遊びとは?
リズム遊びは、手拍子や足踏み、歌、身体の動きなどを通して、リズムを楽しむ活動です。
例えば、
- 先生の手拍子をまねる
- 歌に合わせて歩く
- 「トントン」「パンパン」とリズムを打つ
- 友達とリズムをかけあう
こうした活動は、保育の現場でもよく行われています。
繰り返すうちに、自然と拍を感じたり、相手の音を聴いたりすることもあります。
リズム遊びだから学びが浅い、ということではありません。
楽しさの中に、大切な音楽体験があるのです。
リトミックとは?
リトミックは、スイスの音楽教育家エミール・ジャック=ダルクローズによって考案された音楽教育法です。
音楽を聴き、身体で感じ、動きや表現を通して音楽を学びます。
例えば、ピアノの音楽に合わせて歩く活動。
音楽が速くなったら、歩く速さも変わる。
音楽が止まったら、動きを止める。
音の強弱や拍子が変われば、その変化を身体で表現する。
ここでは、ただ歩くことだけが目的ではありません。
音楽の変化を聴き取り、自分の身体を通して理解し、表現することが大切になります。
また、リトミックには即興や創造的な活動も含まれます。
つまり、リズム遊びとリトミックは、完全に別々のものではありません。
リズム遊びを、リトミックの音楽学習の一部として取り入れることもできるのです。
同じ手拍子でも、音楽の学びは広がる
例えば、4拍の手拍子をしてみましょう。
「タン、タン、タン、タン」
みんなでまねをする。
それだけでも楽しいリズム遊びです。
では、少し発展させてみましょう。
今度は音楽の速さを変えてみる。
強く打ったり、弱く打ったりする。
途中で音楽を止めてみる。
子どもたちは、耳で音楽の変化を感じ、自分の動きで表現するようになります。
さらに、先生がリズムを打ち、子どもが返す。
今度は子どもがリズムをつくり、先生が返す。
同じ手拍子でも、音楽の聴き方や活動の目的によって、学びは広がっていきます。
私は、このように相手と拍を共有する時間が好きです。
4分音符は、人と人をつなげます。
難しいことをしなくても、同じ拍を感じるだけで、そこに音楽のつながりが生まれるのです。
では、あそびうたリトミックは何が違うのでしょう?
私が考案した「あそびうたリトミック」は、あそびうたを入口にして音楽活動を組み立てる指導法です。
中心にあるのは、
ことば・からだ・かけあい。
例えば「ぴょんぴょん」ということば。
まず、声に出してみる。
そのことばのリズムを感じてみる。
身体を動かしてみる。
歌にしてみる。
先生と子どもで、歌やリズムをかけあってみる。
そこから、拍、リズム、音の強弱、音の高低、音楽の流れなどを感じる活動へと発展させていきます。
ここで大切なのは、あそびうたを歌ったり踊ったりして終わりにしないことです。
ひとつの歌から、どのような音楽の学びを生み出すか。
子どもの反応を受け取りながら、次の活動へどうつなげていくか。
その組み立て方に、あそびうたリトミックの特色があります。
もちろん、一般的なリトミックでも歌やことば、即興的なやりとりは使われます。
違いは、これらの活動を行うかどうかではなく、あそびうたを出発点として、音楽体験をどのように展開していくかというところにあります。
現場での実践例|『おちばくん』
先日、オリジナルのあそびうた『おちばくん』を使った音楽活動を行いました。
絵本の世界から歌へ、そして身体表現へと活動を広げていきます。
みんなで円になり、歌いながら歩く場面もありました。
歌の途中には、「かぜさん、ふー」というところがあります。
私は、そこでピアノの伴奏を止めました。
そして、一人ずつ「ふー」と息を吹く体験を取り入れました。
全員が参加しました。
音楽は、最初から最後まで流し続けなければならないわけではありません。
ときには止める。
待ってみる。
子どもの反応を受け取る。
そして、また音楽へ戻っていく。
この活動では、歌のことば、呼吸、身体表現、音楽の始まりと終わり、そして仲間との時間がつながっています。
あそびうたを入口に、ひとつの音楽体験をいくつもの活動へ発展させていく。
これも、私が大切にしている指導の一例です。
「どー」ということばから生まれた音楽の理解
ある日のピアノレッスンで、印象に残る出来事がありました。
音の長さについて学んでいたとき、生徒さんが聴こえた音を自分なりのことばで表現したのです。
「どー」
「ど」ではなく、「どー」。
音が長く続いていることを、伸ばし棒で表していました。
楽譜には、全音符という記号があります。一般的に、4分の4拍子では4拍分の長さを示すものです。
しかし、記号の意味を知ることと、実際に音の長さを感じ取ることは、必ずしも同じではありません。
このとき生徒さんは、耳で感じた音の長さを、自分のことばに置き換えていたのだと思います。
聴くこと、感じること、声やことばで表現すること。
こうした体験が、音楽への理解を深めるきっかけになります。
これは個別のピアノレッスンでの出来事ですが、私があそびうたリトミックで大切にしている「ことば・からだ・かけあい」という考え方にも通じています。
音楽の理解は、先生から答えを教わるだけで生まれるものではありません。
子ども自身が音楽の中で感じ、考え、答えを見つけていくこともあるのです。
子どもの反応から、音楽活動をつくる
『おちばくん』の集団活動と、個別ピアノレッスンでの「どー」。
一見、違う活動のように思えるかもしれません。
でも、どちらにも共通していることがあります。
それは、子ども自身の表現を出発点にすることです。
先生が準備した活動を進めることは、もちろん大切です。
でも、子どもが思いがけないことばを発したり、予想していなかった動きをしたりすることもあります。
そんなとき、その反応をどう受け止めるか。
そこから何を感じ取れるか。
次の音楽活動にどうつなげられるか。
私は、こうしたことを現場でいつも考えています。
すべての子どもが同じ表現をする必要はありません。
その子なりの音楽との向き合い方があるのです。
リズム遊びとリトミック、どちらがよいの?
どちらが優れている、ということではありません。
リズム遊びには、リズムを楽しむよさがあります。
リトミックには、音楽を身体で経験しながら学びを深めていく教育的な考え方があります。
そして、あそびうたリトミックでは、あそびうたから「ことば・からだ・かけあい」へと活動を展開していきます。
先生が音楽的なねらいを持つことも大切ですが、それによって子どもの自由な表現を狭めてしまっては、もったいないと思います。
何より忘れたくないのは、音楽を楽しむことです。
子どもも、先生も。
音楽を一緒に楽しみながら、そこから新しい発見が生まれていく。
私は、そんな時間を大切にしています。
まとめ|音楽を楽しむことから、学びが生まれる
リトミックとリズム遊びは、活動の形だけでは区別できません。
リズム遊びはリズムを楽しむ活動であり、リトミックは音楽を聴き、身体で経験しながら学ぶ教育法です。
そして、あそびうたリトミックは、身近なあそびうたを入口にして、ことば、声、身体、かけあいを結びつけながら音楽活動を発展させていく指導法です。
歌って、動いて、ことばで遊んで、音楽をつくる。
子どもが自分の力で音楽を感じ、表現し、新しい発見をする。
そんな音楽の学びを、これからも大切にしていきたいと思います。
関連記事
参考資料
この記事の執筆者
五十崎佳子
一般社団法人 国際あそびうた音楽協会 代表理事・あそびうたリトミック創始者。
音楽教育、ピアノ・ボーカル指導、発達支援の現場での音楽活動、指導者養成などに取り組んでいます。